1 物権の意味
民法第2編は物権です。物権とは物に対する権利をいうのですが、それでは、人が物権を持っているとはどのようなことなのでしょうか。
代表的な物権である所有権を例にとって説明しましょう。
AがX地を所有しているとします。AはX地に家を建てることができますし、あるいは畑として耕作することがもできます。
またAはX地を担保にして金銭を借りることができます。
さらにAはX地を他人に売却することもできます。これらを民法は、AはX地を自由に使用・収益および処分できると表現します。
つまり所有権を持っているということは物をどのようにでもできることを意味します。
所有権は物に対する全面的な支配を内容とする権利とされているのです。
所有権を有することによってできることは他にもあります。BがX地に無断で自動車を駐車させているとき、X地の所有者たるAは所有権を根拠と
してBに自動車の撤去を要求できます。
これを所有権に基づく妨害排除請求権といいます。この機能は所有権が物を直接的に支配する権利であることが認められるものです。
つまり物を誰の手を借りることなく自由に使用できることを内容としている権利なのですから、これを他の者から侵害された場合その排除を
求めることができるのは当然だと考えられるわけです。この種の請求権は他に、所有権が奪われたときにその返還を請求することができる
所有物返還請求権、所有物の侵害のおそれがある場合にその侵害の防止を請求する所有物妨害予防請求権があります。
これらの請求権は所有権に限らず、ほかの物権についてもその物権の内容に対応して認めれれます。
そして、これらの請求権は物に対する直接の権利である物権特有のものなので物権的請求権とも呼ばれます。
以上、AがX地の所有権をもつということの効力を説明しましたが、全面的支配権ということを除けば、そのほかの物権にも当てはまります。
たとえば、建物所有を目的とする地上権は、建物を建てる範囲で他人の土地を利用することができ、それが妨害されたときは妨害排除請求も
できるのです。
2 物権の性質
物権の性質について債権と比較してみましょう。
⑴ 物権の種類とか内容は、法律で規定したものほかは認められないとされています。つまり民法やその他の法律で規定された物権以外は、勝手に
作りだすことができません。これを物権法定主義といいます。債権の場合は契約自由の原則によって、どのような内容のものでも原則として自由に
作り出せます。