契約書面や登記申請がなくても当事者の合意という意思だけで効力を生じることから、これを物権変動に関する意思主義といいます。
しかしこれだけでは完全に買主が土地所有権を取得し、抵当権者が抵当権を確保できるのではありません。
以上の物権変動の効力が認められるのは、A・Bの2人の間だけであり、その他の人に対してはまた別の要件、つまり登記を備えることを
必要とするのです。
上述のAB間の土地売買について、CがAから二重に同じ土地を買い受けた場合、CはAB間の売買契約当事者ではないのですから当事者に対して
第三者と呼ばれます。
そして土地の所有権がAからBへ移転したことをCに主張するためには、AからBへ登記が移転されることが必要なのです。
この登記のことを物権変動が生じたことを公に示すという意味で公示方法といい、物権変動を第三者に主張するためには公示方法が必要である
ことを規定しているのです。
このように公示方法を持って第三者に主張するための要件とすることを「第三者に物権変動を対抗する」ということから、対抗要件主義といい、
公示方法のことを対抗要件と呼びます。
❷不動産の二重譲渡
典型的な不動産の二重譲渡の場合を例に説明をしてみましょう。例えばAかその土地をBにに売れば、Bは登記をしなくても土地を取得します。
BはAやAの相続人に対して所有者であることを主張できるのです。
しかし次に第三者Cが同じ土地をAから二重に譲り受けると、Bは対抗要件としての登記を備えなければ、Cに対して土地所有権の取得を主張
できなくなるのです。
もちろんCの側でも登記を備えないとBに所有権を主張できません。そして、B・Cのうち先に登記したほうが完全な土地所有権を
得ることになるのです。つまり万人に対して土地所有権を主張するためには、必ず対抗要件たる登記を備える必要があるのです。
この対抗要件は不動産についてのものですが、これは動産の物権変動についてもあてはまります。
❸対抗関係とされる不動産物権変動
では次に、不動産物権変動の対抗要件について具体的に問題点を挙げてみましょう。
この問題では、⑴登記をしなければならない物権変動の種類という点と、⑵登記しないと対抗できない第三者の範囲という点を区別して
考えるのが普通です。
⑴物権変動は、売買や贈与など意思表示に基づく場合が多いのですが、意思表示に基づかないで時効や相続によって発生する場合もあります。
売買等の意思表示に基づく場合に、第三者対抗要件として登記が必要なことは言うまでもありません。
しかし、時効や相続の場合には少々異なります。