最高裁は、
共同相続人の1人が、他の相続人の相続人まで第三者に売り渡した事例で、他の相続人は登記なしに自己の相続分を第三者に対抗できるとしました。
ただし、遺産分割によって法定相続分と異なる相続分を取得した相続人は、遺産分割によって取得した分については、登記なしに第三者に対抗
できないとしています。また、時効に関しては、その物権変動が時効完成前なら登記不要、後なら登記が必要としています。
⑵登記しないと対抗できない第三者の範囲についてはどうでしょうか。
AからBが土地を買い受け、土地所有権を取得した場合、Bは登記を備えないとその土地に無断で車を駐車しているCにそれを撤去せよと
言えないのでしょうか。
このようなCも「登記をしなければ対抗できない第三者」であるとすれば、Bに登記がないと自動車の移動も要求できないことになります。
しかし、そもそも土地の取引について対抗要件たる登記を必要としたのは、土地の所有者が目に見えないものであることから、誰が所有者であるのか
を登記によって公示して所有権者を明らかにするためです。
Cのような不法な者にまで文句を言わせるためではないのです。
したがって、Cは対抗要件を必要とする第三者ではなく、Bは登記がなくてもCに自動車の排除を請求できるのです。
結局、土地を取得したものが登記をしなければ対抗できない第三者とは、すべての第三者ではありません。
Cのような不法な者を除いた第三者です。これらの者を判例は「登記の欠缺を主張する正当の利益を有する第三者」と表現しています。
例えば、土地を二重に譲り受けた者や売買の目的となった土地に地上権を取得した者などを言うのです。
2 所有権
❶所有権とは
人が土地の所有権を持っているということはどのようなことでしょうか。土地について地上権を持っている場合と比べて考えてみましょう。
両方とも土地を利用する権利は持っていますから、土地を駐車場にしても建物を建ててもよいことは同じです。
しかし、地上権者ができるのはこのように土地の利用までであり、所有者のように土地を売却してその代金を手に入れることはできません。
ところが、所有権の場合は土地を利用することも、売却して代金を手に入れることもできます。
所有権は他の制限物権と比べると物を自由に利用・処分できることが特徴です。
これが物に対する全面的支配権という所有権の性質です。
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