3制限行為能力者
人は、人間であるということだけで権利能力を有しますが、人といっても様々な人がいます。
赤ん坊や小学生もいますし、大人とはいえ、1人で取引させるには危険な人もいます。
民法はこれにどのような対処をしているのでしょうか。
民法では、取引能力のない者を保護するために、取引をするためには取引について判断できるだけの能力がなければならず、その能力のない者のした取引は効力を生じないとしました。
しかし、自分が取引の当時に取引の能力があったか否かを裁判で証明するのは難しいことも多く、能力のない者の保護にならないこともあります。
そこで、民法は、未成年者、成年被後見人、被保佐人、制限行為能力者として規定し、彼らのした取引は取り消すことができるものと定められています。
⑴未成年者
未成年者というのは、20歳未満の人をいいます。民法20歳未満の人を一律に制限行為能力者としています。
ただし、未成年者でも婚姻すると成年者として扱われるようになります(成年擬制)。
未成年者には保護者として法定代理人(親権者など)がつけられます。
法定代理人が未成年者に代わって取引をすれば(代理)、未成年者は権利を取得できます。
未成年者が自分で取引をする場合には、法定代理人の同意を得なければならないのが原則です。
未成年者が法定代理人の同意を得ないでした取引は取り消すことが、取り消されると取引は始めからなかったことになります。
⑵成年被後見人
成年被後見人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者で、後見開始の審判を受けると、成年後見人が保護者として付されることになります。
成年被後見人は、事理を弁識する能力がないと判断されていますから、成年被後見人の法律行為は常に取り消すことができます。
最も例外的に日用品の購入などの日常生活に関する行為については単独ですることができるとされており、取り消すことはできません。
⑶被保佐人
被保佐人は、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な者で、家庭裁判所によって、保佐開始の審判を受けると保護者として保佐人がつけられます。
保佐人には申立てによって代理権を付与することができます。被保佐人には著しく不十分とはいえ、ある程度の判断能力は認められているので、自分1人で取引をすることができるのが原則です。
例外として、民法13条1項に列挙された行為についてだけ保佐人の同意が必要とされ、同意のない場合は取り消すことができる。
⑷被補助人
被補助人とは、精神上の障害により、事理を弁識する能力が不十分な者で、家庭裁判所によって、補助開始の審判を受けた人のことをいいます。
被補助人は被保佐人よりも判断能力が高く、原則として単独で取引行為を行えます。
ただし、重要な財産上の特定の行為に限って、保護者である補助人の同意を必要とする旨の審判をすることができます。
当然に同意が必要なのではなく、審判で同意を必要とする制限を加えることができるのです。